四苦 four truth 2004 1 4
仏教では、「四苦(four truth, four satya)」という考え方があります。
人間には、四つの苦しみがあるという考え方です。
これは、「生老病死」の四つの苦しみです。
「生まれてくる苦しみ」
「老いる苦しみ」
「病の苦しみ」
「死の苦しみ」
「生まれてくる苦しみ」とは、
何一つ不自由なことがない天国の暮らしから、
この世に生まれてくるのは、苦しみであるということです。
この世に生まれれば、
食べなければならない。
眠らなければならない。
寒さに耐えなければならない。
暑さに耐えなければならない。
このように、肉体に起因する肉体の束縛によって、
不自由な生活をしなければならない。
次に、「老いる苦しみ」を、現代では、あまり理解していないかもしれない。
核家族化によって、身近に、老人がいなくなったからでしょう。
男性では、かつては、優秀で、仕事も、大きな業績をあげた人が、
今では、誰かが、身の回りの世話をしなければ生きていけなくなっている。
かつての栄光を知る知人は、何と気の毒なことだと思っても、
本人は、痴呆により、恥じることはなく、楽しい日々を送っている。
医療技術の発達によって、体の健康は維持できたが、痴呆までは治せなかった。
女性では、「老いる苦しみ」とは、「醜くなる苦しみ」と言えるでしょう。
かつては、誰もが美人と認めてくれたが、今は、日々、醜くなる。
しかも、今では、トイレの世話を他人にお願いしている。
人間とは、老いるとともに、赤ちゃんに戻っていくのです。
つまり、人間は、老いると、赤ちゃん並みに、手間がかかるのです。
これらの苦しみを、「四苦(four truth)」に数えたのです。
「生老病死」の四つの苦しみを、誰も逃れることはできないのです。
ですから、これを、4つの真理と言うのです。
そういうわけで、仏教では、
もう、これ以上、四苦の苦しみがある「この世」に生まれてこないように、
修行をして、悟りを開いて、この四苦の輪廻を断ち切ろうと考えたのです。
こうしないと、この世に生まれては、四苦に苦しみ、あの世に行って、
そして、また、時期が来れば、この世に生まれては、四苦に苦しみ、あの世に行く。
この繰り返しとなってしまうのです。
さて、修行をして、悟りを開けば、この世に生まれてこなくなるか。
しかし、そうはならない。
新しい仕事ができるのです。
確かに、修行をして、悟りを開けば、
「時期が来れば、自動的に、この世に生まれてくる」というサイクルからは、
外れることができる。
しかし、悟りを開けば、
この世にて、四苦に苦しむ人たちを救いたいという思いが強くなるのです。
こうして、自発的に、この世に生まれてくるのです。